財布の中にある1円玉。
買い物をするとき、
「1円足りない……」
となると、急にその存在感を発揮する。
一方で、1円玉を見つけたときは、
「まあ、1円だしな」
くらいに思ってしまう。
しかし、この小さな硬貨。
実は、作る側からすると「1円では済まないかもしれない」。
なんとも不思議な存在である。
1円玉は、本当に1円なのか
結論から言うと、1円玉は純アルミニウムでできており、重さはちょうど1グラム。
「1円玉だから、アルミも1円分くらい入っているのかな」
と思うかもしれない。
ところが、話はそう単純ではない。
1円玉に使われているアルミニウムそのものの価格は、条件によって変わるものの、1枚あたり1円を下回る。
例えば、アルミニウムを1kg=300円と仮定すると、
300円 ÷ 1,000g = 0.3円
となる。
つまり、材料だけなら約0.3円。
ここまでは、
「おお、ちゃんと1円以内に収まっているじゃん」
という感じである。
問題はここからだ。
1円玉はアルミを置いただけでは完成しない
当然だが、1円玉はアルミニウムを1グラム持ってきて、
「はい、1円です」
と言って渡せば完成するわけではない。
アルミニウムを加工し、1円玉の形にして、表面に「1」と刻印する。
さらに重さや大きさを確認し、不良品がないか検査する。
製造設備も必要だし、電気も使う。
人も働く。
完成した硬貨は保管され、運ばれていく。
つまり、
アルミニウム「0.3円」
↓
加工する
↓
刻印する
↓
検査する
↓
運ぶ
↓
ようやく1円玉
という流れになる。
そう考えると、1円玉は意外と手間がかかっている。
財布の中では一番軽そうな顔をしているのに、裏では結構な工程を通っているのだ。
「1円玉は1枚3円かかる」は本当?
ここで、よく見かける話がある。
「1円玉は1枚作るのに約3円かかる」
という話だ。
もし本当なら、
1円のものを作るのに3円。
差額は2円。
1円玉を作るたびに、
「2円赤字です!」
ということになる。
1円玉からすると、もはや完全に身の丈に合っていない。
ただし、ここは注意が必要だ。
造幣局は硬貨1枚ごとの正確な製造原価を公表していない。
そのため、「現在の1円玉は必ず3円かかる」と断定することはできない。
過去の資料などをもとに、材料費や製造費を含めて「約3円」とする試算が紹介されることがある、という程度に考えるのが適切だ。
つまり、
1円玉「俺、3円かかるらしいよ」
と堂々と言わせるのは、ちょっと危ない。
もし本当に3円なら、1円玉はかなりの赤字社員
仮に1枚3円かかるとしよう。
すると、
額面:1円
製造費:3円
となる。
会社に例えるなら、
「この仕事、1円の売上を作るために3円使いました!」
という社員である。
普通なら上司から、
「ちょっと会議室来てもらえる?」
となりそうだ。
しかし、1円玉には逃げ道がある。
そもそも、1円玉は利益を出すための商品ではないからだ。
1円玉の仕事は、買い物の金額を細かく調整したり、現金で正確なお釣りを渡したりすること。
つまり、
「利益は出していませんが、必要な仕事はしています」
というタイプである。
会社に一人くらいいそうだ。
「じゃあ1円玉をなくせばいいじゃん」
ここまで読むと、こう思うかもしれない。
「そんなにお金がかかるなら、1円玉を作るのやめればいいのでは?」
たしかに、一理ある。
しかし、そう簡単にもいかない。
1円玉がなくなれば、現金で支払うときに端数をどうするのか決めなければならない。
例えば、
「税込1,001円です」
と言われたとする。
1円玉がなければ、
「じゃあ1,000円で!」
となるのか、
「1,010円で!」
となるのか。
お店側も困る。
客側も困る。
レジも困る。
そして、おそらく一番困るのは財布だ。
今まで大量に集めてきた1円玉を、
「今日から君たちは必要ありません」
と宣告しなければならない。
長年財布の底で眠っていた1円玉たちにとっては、かなり切ない話である。
1円玉は「使わないのに増える」という謎もある
しかも1円玉には、もう一つ不思議なところがある。
財布の中で、なぜか増える。
コンビニで買い物をして、
「また1円玉増えた……」
と思う。
そして家に帰る。
財布から1円玉を出して貯金箱に入れる。
数日後。
また増えている。
1円玉には繁殖能力でもあるのだろうか。
もちろん、そんな能力はない。
ただ、1円単位のお釣りを受け取る機会があるため、気づくと財布の中に溜まっていく。
そして最終的に、
「これ、全部合わせたら何円あるんだろう」
という謎のイベントが始まる。
それでも1円玉は必要
製造にどれだけ費用がかかるとしても、1円玉には役割がある。
商品の価格を1円単位で設定できる。
現金で正確なお釣りを返せる。
日常の細かい決済を支えることができる。
つまり、1円玉は「1円しかない」のではない。
1円という単位を成立させるための存在なのだ。
財布の中では、
「たった1円」
と思われている。
しかし、その1円を作るためには、アルミニウムだけでなく、加工、刻印、検査、設備、人の手間など、さまざまなコストがかかっている。
そう考えると、次に1円玉を見つけたとき、
「なんだ、1円か」
ではなく、
「お前、意外と手間かかってるんだな」
くらいの気持ちにはなるかもしれない。
まとめ
1円玉について知っておきたいポイントは、次のとおり。
- 1円玉は純アルミニウム製
- 重さは1グラム
- 材料のアルミニウムだけなら1円未満になる
- しかし製造には加工・刻印・検査・設備・輸送などの費用がかかる
- 造幣局は1枚あたりの正確な製造原価を公表していない
- 過去の試算では約3円とされる例もある
- そのため「1円より高い費用をかけて作られている可能性がある」
普段は財布の中で一番存在感がない1円玉。
でも、その小さな1枚を作るために、たくさんの工程と人の手間がかかっている。
そう考えると、1円玉を落としたときも、
「まあ1円だし」
ではなく、
「お前、作るの結構大変なんだからな」
と、少しだけ優しく拾ってあげたくなる。
……まあ、1円なので、拾うかどうかはあなた次第である。


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