「これ、やっておいて」
そうお願いしたら、なぜか相手の顔が曇った。
一方で、同じ内容なのに別の人がお願いすると、
「いいですよ!」
と、あっさり引き受けてもらえる。
この差は何なのか。
実は、お願いの内容だけでなく、**「どう伝えるか」**が重要なのだ。
前回は、『伝え方が9割』から「伝え方は才能ではなく技術」という考え方と、相手の頭の中にあるメリットを考える「思考の3手順」を紹介した。
今回は、その続き。
「相手のメリットを考えるのは分かった。でも、具体的にどう言えばいいの?」
そんな人のために、相手からYESを引き出す5つの切り口を紹介していく。
①「好きなこと」に寄せる

1つ目は、相手の好きなこととお願いを組み合わせる方法。
例えば、ファストフード店で商品が出てくるのが遅れているとする。
「申し訳ありません。あと4分ほどお待ちください」
と言われたら、
「……4分か」
となる。
ところが、
「出来たてをご用意しておりますので、4分ほどお待ちいただけますか?」
と言われたらどうだろう。
同じ4分なのに、印象が変わる。
「待たされる時間」から「出来たてを食べるための時間」になったからだ。
人間、単純である。
つまり、お願いに相手の「好き」をくっつける。
これだけでも、印象はかなり変わる。
②「嫌いなこと」を避けさせる

2つ目は、相手が嫌がることを避けてもらう方法だ。
例えば芝生に入ってほしくないとする。
「芝生に入らないでください」
でも伝わる。
しかし、
「農薬の匂いがつきますので、芝生には入らないでください」
と伝えれば、
「農薬の匂いがつくなら、やめておこう」
となりやすい。
人は「お願いされたから」よりも、**「自分が嫌な目に遭いたくないから」**のほうが動きやすい。
防犯でも同じだ。
「痴漢に注意!」
ではなく、
「近隣の皆様の見回りにより、痴漢を逮捕できました。ありがとうございます」
と伝える。
すると痴漢側からすると、
「……この辺、やめとこ」
となる。
注意書きひとつで、急に怖い。
③「やる・やらない」ではなく「どっち?」

3つ目は、比較させる方法だ。
「今度、打ち合わせしませんか?」
と聞かれると、「やる・やらない」を考えなければならない。
そこで、
「○日と○日なら、どちらがご都合いいですか?」
と聞く。
すると相手は、やるかどうかではなく「どちらにするか」を考えればいい。
デートでも、
「今度ご飯行かない?」
より、
「パスタとピザのお店があるんだけど、どっちがいい?」
と聞く。
気づけば、
「行くかどうか」ではなく「何を食べるか」まで話が進んでいる。
お願いの難易度を下げるというより、考える順番を変えているのだ。
④「承認」してからお願いする

4つ目は、相手を認めてからお願いする方法。
例えば部下に、
「○○君、この企画書を急いで作っておいて」
と言う。
これでも仕事は頼める。
ただ、相手の心の中では、
「はいはい、また仕事ね」
となっているかもしれない。
そこで、
「前回の企画書、評判がよかったんだよ。今回も○○君のアイデアが聞きたいと言われていてね。ぜひお願いしたい」
と伝える。
すると、
「自分だから頼まれている」
という感覚が生まれる。
ただの作業が、**「期待されている仕事」**に変わるわけだ。
とはいえ、何でもかんでも褒めればいいわけではない。
誰でもできる仕事なのに、
「君にしか頼めない!」
を連発すると、たぶんバレる。
⑤「一緒にやろう」で仲間にする

最後は、共同作業にする方法。
子どもに、
「勉強しなさい!」
と言う。
すると、
「今やろうと思ってた」
という謎の防御魔法が発動する。
そこで、
「お父さんも興味があるから、一緒に歴史の勉強してみない?」
と言ってみる。
「あなたがやりなさい」ではなく、**「一緒にやろう」**に変えるだけで心理的なハードルが下がる。
掃除でも、
「部屋を掃除しなさい!」
より、
「一緒にゴミ拾いしよう」
のほうが動きやすい。
人は命令されるより、仲間にされたほうが協力しやすいのだ。
5つの切り口をまとめると
今回の5つをまとめると、
①好きなこと
→ 相手の好きなものとお願いを組み合わせる。
②嫌いなこと
→ 相手が避けたいデメリットを伝える。
③比較
→ 「やる・やらない」ではなく「AとBどっち?」と聞く。
④承認
→ 相手の能力や存在を認めてからお願いする。
⑤共同
→ 「あなたがやって」ではなく「一緒にやろう」と誘う。
共通しているのは、
「自分がどうしてほしいか」だけを考えないこと。
相手から見たときに、
「それならいいか」
と思える理由を作っている。
今日から「お願いのレシピ」を使ってみよう
大切なのは、5つを暗記することではない。
誰かにお願いするとき、
「このお願い、どの切り口が使えるかな?」
と一度考えてみる。
それだけでも、伝え方は変わってくる。
「○○して」
と言う前に、3秒だけ止まる。
「この人は何が好き?」
「何を嫌がる?」
「選択肢を出せない?」
「認めてあげられる部分は?」
「一緒にできない?」
そう考えてから言葉にする。
伝え方は、才能ではない。
相手の立場をちょっと想像する技術なのだ。
ただし、5つの技術を覚えたからといって、何でもYESになるわけではない。
世の中には、
「何を言ってもNOな人」
もいる。
その場合は、伝え方の問題ではない。
たぶん相手が眠い。
あるいは、普通に嫌なのである。
そこは潔く受け入れよう。


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